“予防”の重要性を発信し続ける

ー急性期医療の現場で、多くの命と向き合ってきた医師が出した答えは”予防”だった。

医療法人TASUKI 循環器内科と心臓リハビリの高針クリニック院長・竹中真規(たけなか・まさき)医師。
名古屋第二赤十字病院や半田市民病院などで15年以上、循環器専門医として心臓病や高血圧、不整脈といった“命に直結する病”と闘い続けてきた。

その経験の中で竹中院長が痛感したのは、「病気が重症化する前に手を打つこと」の重要性だった。

だからこそ、高針クリニックでは“予防医療”を診療の中心に据えている。
病気が起こってからではなく、起こる前に生活を変えていく―

そのために必要なのは、医師が正しい知識をわかりやすく伝え、行動を後押しすることだ。竹中医師がInstagramなどSNSで積極的に発信を続けるのも、その一環である。

必要な人に、必要な情報を、誤解なく届けるために。


“医療が届きにくい時代”にあって、なぜ声を上げ続けるのか。

その背景には、現代医療が抱える構造的な課題への鋭い視点と、患者一人ひとりに寄り添おうとする静かな情熱があった。

目次

「もう少し早く来てくれたら」をなくしたい

「もっと早く治療できていたら、結果は違っていたかもしれない」―。
急性期医療の現場で、竹中医師が幾度となく抱いてきた悔しさだ。

救急搬送されてくる患者は、すでに重篤な状態に陥っていることが少なくなかった。
発症してからでは、間に合わない場面があまりにも多かった。

循環器疾患は生活習慣や日々の選択と深く結びついている。
高血圧や糖尿病、脂質異常症といったリスク因子を早い段階で管理できれば、発症そのものを防ぐ可能性がある。
にもかかわらず、多くの患者が症状を自覚するまで受診せず、気づいたときには重症化している。
竹中医師は、この“医療の空白”に強い問題意識を抱くようになった。

そこで決断したのが、“予防の医療”への転換だった。発症してから命を守る医療ではなく、発症する前に患者に寄り添い、生活習慣の改善や行動変容を促していく。
高針クリニックを立ち上げたのも、その思いを実践するためだった。
「未病のうちにアプローチすることが、患者の未来を守ることにつながる」
竹中医師のキャリアの軸は、こうして“予防”へとシフトしていったのである。

二極化する患者層──「気づく人」と「気づかない人」

クリニックに訪れる患者層は、明確に二極化しているという。
一方は、健康診断で異常を指摘され「今のうちに治したい」と自ら来院する、健康リテラシーの高い層。
もう一方は、「とりあえず検診だけは受けたけど、治療するのは面倒だ」と考える層。

さらに年齢層で見れば、若年層は何らかの違和感をきっかけに受診するケースが多く、高齢層は心不全や動悸など、循環器疾患の末期状態で初めて医療を求める傾向がある。

この“気づき”の差を埋めるには、診療だけでは届かない。
だからこそ、情報との接点そのものを医師の側から提供する必要があると、竹中医師は考える。

予防医療が届かない三つの理由

竹中医師は、予防医療が人々に「響かない」「実践されない」背景に、3つの要因があると語る。

1. 患者とのコミュニケーションの機会が少ない

診察の時間内では、疾患のリスクや治療の意義を十分に噛み砕いて説明することが難しい。医師が伝えた「つもり」でも、患者の理解には至らない。
だから、“診療外”での情報提供が必要だと竹中医師は語る。

2. 情報が多すぎて、正解がわからない

ネットやSNSから情報を収集する人が増えているが、正しい情報と不正確な情報が“横並び”になって表示されている現状がある。
その結果、健康食品やエビデンスの乏しい療法に傾倒して、本来必要な医療にアクセスしそびれるケースも増えている。
情報が溢れている状況が、医療情報難民という新たな社会問題を生んでいる。

3. 健康教育の場がない

そして根本的な問題は、学校教育や家庭で健康リテラシーが育まれてこなかったこと。
「病気になったら医者に行けばいい」という受け身の姿勢が、社会全体に根づいてしまっている。
凝り固まった先入観を排除するためには、若いうちから健康教育を受けられる体制を構築していくことが重要だという。

SNSは“診療の延長線”──医師の言葉に力を持たせる場所

そこで竹中医師が始めたのが、Instagramでの情報発信だ。
投稿内容は、循環器疾患の解説だけでなく、「病院に行くか迷っているときの判断軸」「生活習慣の小さな改善」など、診療室では話しきれないことが多い。

「有名人が言うと響くのに、医者の言葉は響かない。それなら、医師も自分の発信力を高める努力が必要です」と語る。
SNSでフォロワーと対話することで、診察前から“信頼”が始まっているケースも増えているという。

一方でSNSで情報発信を行うことは、リスクもある。
誤解を生む可能性、批判を受ける可能性、そして何より医師としての信頼が問われる。

だからこそ竹中医師は、「誰のために発信するのか」という軸を絶対に揺らさない。
「バズらせたい」のではなく、届くべき人に、必要な情報を、誤解なく届けるために、伝え方を磨いている。

“ライフジャーニーとしての医療”という視点

竹中医師がインタビューで何度も使った言葉、それが「ライフジャーニー」だ。
人生という長い旅の中で、どこかで出会う“医療”の役割は、ただ治療をするだけではない。
「その人が人生の中でどう生きたいか」に照らして、
健康や病気、行動の選択肢をどう設計していくか。
その視点を持って医療を語れる医師こそ、これからの時代に求められるという。

予防医療の浸透を目指し、静かな情熱を絶やさず

急性期医療の現場から、”予防”を通して人々の人生に寄り添う医療にシフトチェンジしてきた竹中医師。
あらゆるチャネルを駆使しながら、予防医療・健康教育の普及に向けて奮闘している。
その原動力は、患者からの”感謝”や”信頼”だ。
病院時代の患者から健康の相談を受けることも少なくないという。
病気を治すだけではない、患者の人生に寄り添う医療のかたち。
竹中真規医師の挑戦は、医療を“伝える”という新たなステージへと進んでいる。

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