脳の「専門家」として全身を見つめ、予防医療から人生に寄り添う

ふじさわ脳とからだのクリニック 
永尾征弥(ながお せいや)

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“未来”の健康は“今”の生活によってもたらされる

脳卒中や認知症は、ある日突然降りかかる病のように語られがちだ。
だが、ふじさわ脳とからだのクリニック 院長 永尾征弥(ながお せいや)医師は、その背後に“日常生活の積み重ね”があることを指摘する。

高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満――。
自覚症状のないまま進行する生活習慣病が、20〜30年という時間をかけて脳の血管を静かに蝕んでいく。
「過去をやり直すことはできません。だからこそ、いまの生活をどう変えるかに未来がかかっています」と永尾医師は語る。

これまで急性期の現場に立ち続けてきたからこそ見えてきたものがある。
それは、発症後の治療以上に、発症前の軌道修正こそが人生を大きく左右するという視点だ。
頭痛・めまい・物忘れといった症状への対応と並行して、生活習慣の管理を徹底する。
その両面から未来のリスクに働きかける姿勢こそ、永尾医師が貫く医療の中心にある。

“脳”に惹かれ、そして“全身を診る”医師へ

医師を志した理由にドラマチックな背景はないと永尾医師は笑う。
ただ、医療が身近にあったこと。そして学生時代に学んだ神経の仕組みのおもしろさが、脳神経外科を選ぶきっかけになった。
脳は場所ごとに担う機能が異なり、部位によって症状が変わる。
「身体症状から病気の場所を推測できることが、純粋におもしろかった」と振り返る。

一方で、脳神経外科の現場で痛感したのは、脳の病気が“頭だけの問題”ではないという事実だった。
救急搬送される多くの患者は、重度の生活習慣病を背景に抱えている。
「頭を診る」ことは、「からだ全体を診る」ことと切り離せなかった。
その経験が、永尾医師を予防・未病という領域へ自然と導いていった。

「もし30年前に生活習慣を見直していたら、違う人生を歩めたかもしれない」。
こうした多くの症例に触れてきたことが、永尾医師のスタイルを形作っている。

診断と真正面から向き合うということ

永尾医師のもとには、頭痛・めまい・物忘れなど多様な主訴が集まる。
なかでも頭痛やもの忘れは、永尾医師の専門性を求めて訪れる人が多い。

「慢性的な頭痛に10年以上悩んでいた患者さんがいらっしゃったんですが、治療によってそれが改善すると、本当に心から喜んでいただけました」。
頭痛の治療は、症状の改善が実感できる領域だからこそ、やりがいも大きいという。

ただ、頭痛診療の分野においては、同時にある課題も抱えているという。
頭部の画像だけ撮って「異常なし」で終えてしまうケースが多いことだ。

永尾医師は、自院でCTは撮れるものの、過度な画像検査に依存しない。
必要なときだけ提携病院でMRI撮影を行い、本当に必要な検査だけを行う。

「大事なのは、画像で“異常がない”と確認することではなく、どんな種類の頭痛で、なぜ起こっているのかを患者さんと一緒に理解することです。写真を撮って終わりでは、診療とは言えないと私は考えています」。
検査の回転数より、診断の質。その姿勢が、患者の信頼の核になっている。

地域に根ざす、“脳とからだ”のクリニック

来院する患者は幅広い。
風邪や花粉症、生活習慣病に悩む近隣住民から、慢性頭痛の患者、物忘れを心配して遠方から相談に訪れる高齢者まで、多岐に渡る。
また、必要に応じて眼科や耳鼻咽喉科など他の診療科へ紹介するなど、他科との連携も柔軟だ。

治療のカギとなるのは、永尾医師が重んじる「対話」。
薬の種類や生活指導は、患者の生活背景が変われば最適解も変わる。
認知症が進行すれば、家族や介護職との協力が欠かせない。

「薬を出すだけでは治療は続かないです。患者さんを支える環境まで含めて診療の一部だと考えています」。
症状を診るだけではなく、患者の生活を支えるための地域拠点としてあり続けている。

これからの挑戦

「効率と質の両立」が当面のテーマだと永尾医師は語る。
「一人で診られる人数には限界があります。でも、人数を増やして質が下がっては意味がないと思います」。

将来的には、介護サービスや在宅領域との連携も視野に入れる。
必要な患者に対して、医療と介護の間をつなぐ役割を担えるようにしたいと話す。

もう一つの使命は、正しい頭痛診療と予防医療の重要性を社会に広めること。
自らのホームページや取材などを通して地道に発信を続ける姿勢が印象的だ。

「自分が良いと思う医療を求めている人に届けられるように、情報発信は続けていきたいですね」。
情報が氾濫する時代だからこそ、最前線に立つ医師が責任ある情報を届ける価値は大きい。

未来の健康を、ともに創る

診察室では、些細な変化について会話が交わされることが多い。
頭痛の頻度が少し減った。血圧が安定してきた。薬の飲み忘れが減り、生活が整ってきた。
こうした日々の対話と変化の積み重ねこそが、明日の健康を守る力になる。
永尾医師の医療は、その未来を共につくるためにある。

「転生して人生をやり直すことはできないけれど、今ここから軌道修正はできます」。
派手ではないが、確かな未来を守る医療。
永尾医師は、今日もだれかの人生に寄り添い続けている。

ふじさわ脳とからだのクリニック 
永尾征弥(ながお せいや)

脳神経外科の急性期医療に長年携わり、脳卒中や認知症の発症背景にある生活習慣の重要性を痛感。頭痛・めまい・物忘れといった症状の診療において、丁寧な対話と診断の質を重視する。高血圧や糖尿病などの生活習慣病の管理を含め、脳だけでなく全身を診る視点から予防・未病医療を実践。地域に根ざし、患者の生活背景や家族・介護との連携まで見据えた医療で、未来の健康を共につくることを目指している。

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