──移行期医療の最前線で描く、新しい医療のかたち
あわのこどもクリニック
面家 健太郎(おもや・けんたろう)

岐阜市で小児科・小児循環器を専門とする「あわのこどもクリニック」院長・面家健太郎(おもや・けんたろう)医師。
生まれたばかりの赤ちゃんから学童期の子どもたち、そして先天性心疾患を抱える成人患者まで、その診療の対象は多岐にわたる。
しかし、面家医師が日々向き合ってきたのは、病気そのものだけではない。
小児から成人への“医療の橋渡し”に潜む問題点、そして、社会と医療の間にある見えない壁について話を伺った。
小児から成人へ──“医療の空白”を埋めるために
「先天性心疾患って、手術で完全に治るわけじゃないんです。
大きな問題を小さな問題に置き換えるだけで、一生関わり続ける必要があります。」
手術後も後遺症と向き合いながら、長期的なケアを必要とする子どもたち。
しかし現状では、成人期を見据えた診療体制が全国的に不足しているという。
岐阜県内で成人先天性心疾患(ACHD)を専門に診られる医師は、面家医師を含め数名程度。
「学校や仕事を休まなければ受診できない状況では、患者さんは社会とつながりにくいです。
だからこそ、平日も土曜日も診療できる体制を整えました。
医療のために社会生活を諦めることがないように
──まずはこの岐阜からモデルをつくりたいんです。」

医療と社会をつなぐ「三方よし」の連携モデル
面家医師のクリニックは、大学病院や地域の基幹病院と強固なネットワークを築いている。
大規模なカテーテル検査や手術は病院で行い、日常的な診療はクリニックでフォローする。
患者・大学病院・クリニックの三者にとってメリットのある連携モデルが少しずつ形になってきた。
「東京や九州の大病院からも、『岐阜や名古屋に就職した患者を診てほしい』と紹介をいただきます。
患者さんは仕事を休まず専門医の診療を受けられ、大病院の先生方は本来の業務に集中できる。
結果的に、“三方よし”の関係が築けるようになったんです。」
理念がチームを変えた
開院当初は、理想の医療をスタッフと共有できず、離職率の高さに悩む時期があったという。
転機となったのは、クリニックのミッション・ビジョン・バリューを明文化し、朝礼で毎日共有し続けたこと。
「以前は『良い医療を届けるためには勉強するのが当たり前』だと考えていました。
でも、それではスタッフはついてきませんでした。
経営者として学びを深め、理念を“押し付ける”のではなく“共に描く”ことを大切にしたら、状況が一変したんです。」
スタッフは自主的にセミナーに参加し、資格を取得するようになり、互いを尊重し合う文化が根づき始めた。
結果、チームとしての結束が強くなり、より良い医療を提供できていると実感しているという。

「未病」「親子教育」──診療の枠を超えた挑戦
面家医師が力を入れているのは、病気を「治す」だけでなく「防ぐ」ための医療。
管理栄養士を迎え、子どもたちへの栄養指導や発達支援にも注力している。
さらに、診療室を飛び出して、学校や地域機関と連携した教育活動にも力を入れている。
「親になるための準備ができないまま子育てが始まり、孤立してしまうご家庭は少なくありません。
だからこそ、親子が互いを尊重し、比較ではなく“認め合う”文化を広げたいんです。」
家庭内のコミュニケーション不足やサポート体制の不在が、親子に大きな負担を生む現実を、
多くの子どもや親と会話してきた経験から痛感したという。
こうした課題を背景に、ファミリーコーチングや産婦人科との連携講座を実施。
周産期メンタルヘルスや育児不安に関する講演も積極的に行い、虐待やいじめを未然に防ぐ取り組みを続けている。
理念を持つということ
「医療の役割は、“治す”ことだけではありません。」
若い医師たちに伝えたいのは、自分の理念を持つことの大切さ。
「なぜ医療に向き合うのか」「誰のための医療なのか」
その答えを探し続けることが、患者との信頼を築き、医療の質を高めると語る。
面家健太郎医師が目指すのは、診療室の外まで届く医療。
病気を治すだけでなく、病気を防ぐこと。
そして、子どもたちが将来社会の一員として安心して生きられる環境を整えること。
「医療と社会をつなぐ」
──その挑戦の一歩一歩が、
未来を生きる子どもたちの可能性を広げていく。

あわのこどもクリニック
面家 健太郎(おもや・けんたろう)
小児科・小児循環器を専門とし、新生児から学童期、先天性心疾患を抱える成人患者まで幅広く診療にあたる。小児から成人へと移行する過程で生じる“医療の空白”に課題意識を持ち、診療や大学病院との連携を通じて、社会生活と両立できる医療モデルを岐阜から発信。未病予防や親子教育にも注力し、医療を社会とつなぐ実践を続けている。
