“虫歯ゼロ” を親からの贈り物に

医療法人エストリナ なんばエッセ歯科小児歯科クリニック
理事長 新原 拓也(しんはら・たくや)

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“マイナス1歳”から始まる予防歯科

「虫歯ゼロで成人させることは、親御さんからお子さんへのプレゼントだと思っているんです」
なんばエッセ歯科小児歯科クリニックの理事長 新原拓也(しんはら・たくや)歯科医師は、穏やかな口調でそう語る。
その言葉の背景には、「歯医者は歯が痛くなってから行く場所」というイメージを塗り替えたいという決意があった。

クリニックの待合室では、玄関のドアを開けた瞬間にボールプールが目に入る。
保育士が見守るなかで子どもたちが遊び、隣では母親がクリーニングや治療を受ける。
診療チェアの横には、泣いてしまう子どもをあやすスタッフの姿がある。

0歳、あるいは妊娠期という“マイナス1歳”から始まる予防歯科。
歯並びやかみ合わせまで視野に入れた小児矯正。
そして、すでに歯を失ってしまった人にはインプラントなどの最良の治療を行い、もう一度予防フェーズへと戻していく包括的な診療。
新原歯科医師が描くのは、治療中心の歯科から、人生に寄り添う予防型歯科へのシフトだ。

新原歯科医師の医療哲学、白衣の向こう側に迫った。

“失われた歯は戻らない”

勤務医時代、新原歯科医師はインプラント治療を中心に、崩壊した口腔内を再建する現場に身を置いていた。
「噛めるようにはなる。でも、『これは本当に“元に戻った”と言えるのだろうか』という感覚が拭えなかったんです」

虫歯や歯周病で失われた歯は、本物そのものに戻ることはない。
だからこそ「壊れる前に守る」という発想へと向かっていった。

「元には戻らないから、守るしかない。だから予防歯科が必要だと強く思うようになりました。0歳、もっと言えば妊娠期から関わりたいと考えるようになったんです」

“歯は悪くなる前に守るもの”。
その信念が、新原歯科医師のすべての行動の起点となっている。

親が知ることで、子どもの未来が変わる

妊娠中の母親が知識を持てるかどうかで、子どもの未来は変わる。
「お子さん自身では何もできない時期だからこそ、親御さんが知識を持っているかどうかが大切なんです」

虫歯や歯周病は、生活習慣によってコントロールしやすい。歯周病と全身疾患の関係も明らかになっている。
だからこそ、早い段階から情報に触れ、通院習慣を身につけることが大切だと繰り返し伝える。
新原歯科医師の精力的な情報発信の甲斐もあり、地域では、虫歯がなくても定期検診やクリーニングを希望する家庭が増えているという。

また、予防を徹底するうえで欠かせないのが、小児矯正だと新原歯科医師は語る。
「歯並びが悪ければ、いくらクリーニングを頑張っても虫歯を防ぐのは難しい。だからこそ矯正は必要だと考えています」

矯正は“見た目のため”だけではなく、”虫歯・歯周病を防ぐため”にも重要だという。
すでに歯を失った人にはインプラントなどの最良の治療を行い、再び予防フェーズへと戻す。
治療と予防、その循環を支えるため、矯正医や口腔外科医を含む20名規模のチーム体制が整えられている。

泣いてしまってもいいから連れてきてほしい

「他院では泣いてしまって何もできなかったお子さんが、『ここなら行きたい』と言ってくれることがあります」

その理由は“空間の設計”にある。
玄関を開けるとすぐに見えるボールプール。
保育士が3名在籍し、小さな子どもを預けながら母親が治療を受けられる仕組み。
そして、遊びの要素を取り入れた10分ほどの「口腔育成トレーニング」。

「ボールプールは子どもたちから大人気なんです。『遊びたい』という気持ちから入れるようにしています」

歯科医院は怖い場所ではなく、通いたくなる場所へ。
その転換を、空間づくりから実践している。

予防の文化を地域と育む発信者として

地域全体ではまだ治療中心のクリニックも多いが、虫歯は減少傾向にあるという。
だからこそ、今が予防へのシフトの転換点だと新原歯科医師は考える。

Instagramでの発信を中心に、クリニックの世界観と情報を揃えながら、予防と小児矯正の重要性を伝える。
単なる宣伝ではなく、健康を守るための“知識のインフラ”としての発信をめざしている。

夏祭りやクリスマス会など、地域住民が参加できるイベントも積極的に企画している。
かつて一人で抱えていた業務も、現在はバックオフィスが担い、チームとして動く体制が整いつつあるという。

「予防の文化を地域に広げる」という大きなテーマを、個人ではなく組織として担え、着実に前へと進み続けている。

予防中心の未来を形づくる

新原歯科医師が提示するのは、「治療の先に予防がある」ではなく「予防の上に治療が成り立つ」という新しいパラダイムだ。

ボールプール、託児サービス、口腔育成トレーニング、小児矯正、そして包括的な治療——
これらはすべて、予防を中心に据えた未来の歯科医療を形づくる要素である。

“痛くなったら行く場所”から、“生涯の健康を守るための場所”へ。
その変革の中心には、新原拓也歯科医師の願いと情熱があった。

医療法人エストリナ なんばエッセ歯科小児歯科クリニック
理事長 新原 拓也(しんはら・たくや)

インプラント治療を中心とした勤務医時代を経て、「失われた歯は元に戻らない」という実感から予防歯科へと舵を切る。妊娠期から関わる“マイナス1歳”予防、小児矯正を軸に、虫歯ゼロで成人を迎える社会をめざす。歯科医院を「通いたくなる場所」に変える空間設計と、発信を通じた地域への啓発にも力を注いでいる。

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