脳の未来を守る医療

── 認知症を“生活習慣病”として捉え、40代からの予防に挑む医師の視座

銀座リチャージクリニック
院長 高 卓士(こう・たくさ)

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生活習慣の改善が認知症の予防につながる

「認知症は生活習慣病です。40代からのケアで未来は変えられます」。
高卓士医師が語る言葉には、強い確信と、人々の未来を守りたいという静かな情熱が宿っていた。

精神科医として長く臨床の現場に立ち続けた高医師が見つめてきたのは、症状が“出てから”対応する従来医療の限界だった。
医療が人を支えるはずの場で、患者が不安を抱え、症状が進行した後にようやく対処される現実。
その現実を目の当たりにし、「もっと早い段階で介入できる医療があるはずだ」と思い続けてきたという。
脳波(QEEG)を用いた機能検査、近赤外線を活用した細胞レベルのアプローチ、自律神経を整えるための生活改善。
高医師が提示するのは、脳の働きを“機能”としてとらえ、衰えを可視化し、その人本来のパフォーマンスを取り戻す医療だ。
「なってからでは遅い。でも、何歳からでも遅すぎるわけではない」。
脳の働きを守り、人生の軌道を取り戻すための道を切り拓こうとする医師の姿が、そこにあった。

精神科医として見続けてきた“限界”

高医師の歩みを語るうえで、精神科診療の現場で抱いた違和感は欠かせない。
短時間での薬物療法、管理中心の認知症ケア、改善よりも“維持”を目的としたアプローチ――。
日々の診療のなかで、「これでは本質にたどり着けない」という思いが、少しずつ大きくなっていった。

患者の背景も、生活習慣も、脳の変化も“見えないまま”治療が進んでいく。
その構造を前に、高医師は問い続けた。

――なぜ、この患者はこうなってしまったのか。
――改善する余地は、本当にないのか。

答えを求めて学びを深めるうちに、認知機能の変化が生活習慣と密接に関わっているという最新研究に触れた。そして確信を得る。

“認知症は、予防できる病気だ”。ここから高医師の医療は大きく舵を切る。
脳を科学的に測定し、働き盛りの年代からケアしていく――。
予防医学への転身は、現場での葛藤から導き出された必然だった。

脳を「見える化」する

銀座リチャージクリニックの特徴は、脳を「形」ではなく「働き」で評価する点にある。
MRIやCTでは分からない“脳の動き方”を、QEEG(定量的脳波解析)で数値化し、部位ごとの状態を精密に抽出する。

平均からのわずかな逸脱が、集中力の低下、不安の強さ、感情の乱れにつながる。
高医師は「オーバーワークしている部分、働きが弱っている部分を明確にすることで、初めて適切なケアができる」と語る。

さらに、近赤外線を用いた“細胞レベル”のアプローチや、自宅で取り組めるデバイスも組み合わせ、脳機能の回復と自律神経の安定をめざす。
診療の中心にあるのは、症状ではなく「患者の人生」だ。

治療によって前向きになり、家庭菜園を再開した高齢の女性。
気分の落ち込みが改善し、また歩き始めた患者。
それぞれが本来の生活を取り戻していく姿を、高医師は静かに見守る。

「自信を失っている人が本当に多い。脳の働きを整えることは、自信を取り戻すことに直結するんです」。

高医師の診療を通して、多くの患者が前向きな人生を取り戻している。

自らケアをする文化をつくる

高医師が描く未来には、医療機関の枠を超えた構想がある。

ひとつは、毎年70名規模が参加する「脳科学セミナー」。脳の仕組みや感情の動き、集中力の高め方などを体系的に伝え、健康なうちから脳を整える文化づくりを進めている。

また、高医師が独自に開発した「ストロングマインドテスト©︎」は、人の強みを可視化し、自分らしい生き方を取り戻すための検査だ。

IQだけでは測れない“人間性の力”に光を当てる試みであり、教育や企業、人材育成にも広く応用できる可能性を秘めている。

さらに、高医師はオンライン講座(Udemy)でのコンテンツ配信も準備しており、「集中状態(フロー)への入り方」など、脳科学を日常に活かす学びを提供しようとしている。

「脳をケアすることは、誰にとっても必要な“技術”になる時代が来ます」。

予防から教育、文化の醸成まで。高医師の活動は、脳科学を軸に社会そのもののアップデートをめざす思想に貫かれている。

脳が変われば人生が変わる

高卓士医師の語る「予防医療」は、単なる疾病の予防ではない。
その背後には「脳の働きを整えることが人生の再生につながる」という揺るぎない信念がある。

脳という“人生の司令塔”に目を向け、その働きを数値化し、理解することで人が自分らしく生きる力を取り戻すための営みだ。

症状が現れてから対処するのではなく、人生の早い段階から脳の働きと向き合うこと。
その変化が、社会全体の幸福度を底上げするという確信が、彼を動かしている。

高医師が目指すのは、単なる治療技術の向上ではない。
脳の未来を、一人一人が自ら守っていくという文化を社会に根づかせることへの挑戦だ。

誰もが歳を重ねるこの社会で、高医師は脳の未来を支える医療の道を拓き続けている。

銀座リチャージクリニック
院長 高 卓士(こう・たくさ)


精神科医として臨床に携わる中で、「症状が出てから治す医療」に限界を感じ、脳の働きを“予防”の視点から捉える医療へと舵を切る。脳波などを用いて脳機能を可視化し、人生の早い段階から脳と向き合うことが、人が自分らしく生き続ける力につながると考えている。治療技術の提供にとどまらず、脳の未来を一人ひとりが主体的に守る文化を社会に根づかせることを目指し、予防医療の可能性を発信し続けている。

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