浅草から“がんで命を落とす人をゼロに”

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── 予防医療に挑む、かわぐち内科・内視鏡クリニック 川口佑輔院長の信念

「もう少し早く病気に気づいていれば」── そう悔やむ人は後を絶たない。
しかし、ほんの少しの”早さ”が、命を救い、人生の質を守る──。
そんな「予防の力」を信じ、日々実践し続けている医師がいる。

東京・浅草。情緒あふれるこの下町の一角に、40年以上続くクリニックがある。院長を務める川口佑輔医師は、母が長年営んできたこのクリニックを継承し、現在は循環器内科と内視鏡診療の両軸で地域の健康を支えている。

なかでも彼が強くこだわるのは、大腸カメラ(内視鏡)による大腸がんの早期発見。日本人のがん罹患率1位である大腸がんに対し、「発見の遅れは防げる」という信念のもと、ひとりでも多くの命を守るための啓発活動にも積極的に取り組んでいる。

自らの手で診て、自らの手で伝える

川口医師は、診察から内視鏡検査、検査後の説明まで、すべてを一貫して自らが担当するスタイルを貫いている。

「患者さんにとっては、最初に話した医師と違う人が検査をして、違う人から説明を受けるというのは不安が残ります。だからこそ私は、最初から最後まで、自分の手で向き合うことを大切にしています」
そう語る川口医師の表情からは、患者を守ることに対する使命感が感じ取れた。

検査に不安を抱く患者の心理も熟知しているからこそ、説明も丁寧だ。実際、同クリニックで内視鏡検査を受けた約300人のうち、「痛みがつらかった」と答えた人は1%にも満たなかったという。

「“痛そう”“怖い”という先入観だけで検査を避けてしまう人が多い。でも、実はやってみたら全然大丈夫だった、という声を多くいただいています」

処置する医療と、支える医療のはざまで

「診るだけじゃなくて、“治す”医療がしたいんです」

医師を志した当初から、川口医師には「手を動かす医療」へのこだわりがあった。循環器内科と消化器内科のどちらに進むか迷った末、彼が選んだのは消化器内科の道だった。そこには、がんの中でも特に罹患率が高い“大腸がん”を見つけ、未然に防ぐという、社会的な使命感もあった。

「大腸がんは、早期に見つけて処置すればほとんどの場合で予後が良い。でも、症状が出るころには進行していることも多く、命に関わることもあります」

だからこそ、生活習慣病の管理と並行して、内視鏡検査の普及に力を入れている。現在、同院に通う患者の8〜9割は消化器領域の症状や内視鏡目的の受診であり、Webサイトやブログをきっかけに来院する中年層も着実に増えているという。

「地域の75歳以上の高齢患者さんだけではなく、40代・50代の方が“検査だけ”を目的に来院されることも増えています」

川口医師が掲げる「生活習慣病と内視鏡、どちらも主役であるクリニック」という診療方針が、いま着実に地域に根を張りつつある。

「情報」は、新たな命を守る武器になる

川口医師のもう一つの顔は「発信者」である。
「医療者が良いと思っても、患者さんがそれを知らなければ何も始まりません」

医師としての専門性に加え、知識を独学で学び、ブログの更新やWeb改善にも自ら手を動かす。一人でも多くの人に、正しい医療情報を届けるためだ。

「健康診断で“便潜血陽性”と言われたけど放置している人は多いです。でもそれが進行がんだったら、取り返しがつかない。だから、まず“調べよう”と思ったときに、自分が発信した情報が出てくるようにしたいんです」

ブログだけでなく、台東区内での講演活動も行っており、地域住民に向けた「予防医療の啓発」にも積極的に取り組んでいる。

「大腸がんで亡くなる人をゼロに」──浅草発、地域からの挑戦

では、川口医師が思い描く未来とはどんなものなのか。
「10年後に新しいことを始めたいというより、今やっていることをきちんと普及させたい」
その想いは明確で、力強い。

「浅草という地域で、“大腸がんで亡くなる人をゼロにする”。それが一番の目標です」
内視鏡を受けることで助かる命がある──このシンプルな事実を、もっと多くの人に知ってほしい
と願っている。

また、生活習慣病の診療についても、「結局はこれも早期発見・早期治療」と語る。高血圧や高コレステロールといった慢性疾患は、自覚症状が乏しいがゆえに見過ごされがちであり、「放置が続いた先に、突然の心筋梗塞や脳卒中が起きるケースも多い」と警鐘を鳴らす。

診療技術においてはすでに一定の自信を持ちつつも、なおも研鑽を続ける姿勢は崩さない。日々の診療に加え、地域との接点を持ち続けること。その積み重ねが、川口医師にとっての“理想の医療”なのだ。

病気になる前の一歩に、医療の力を

予防医療の真価は、「病気になる前の一歩」にこそある。川口医師が目指しているのは、浅草という土地の中で、検査や診療を“特別なこと”ではなく“日常の一部”にしていくことだ。
時には診察室の外に目を向け、ブログを書き、講演をし、一人でも多くの人に正しい医療情報を届ける。

「最初の一歩を踏み出してくれないと、僕らは何もできないんです」
その言葉には、医師としての責任と、地域への深いまなざしが宿っていた。患者一人ひとりの命を守るために。そして、その輪を地域全体へと広げるために。浅草の街を見つめながら、川口佑輔医師の挑戦はこれからも続く。

川口 佑輔(かわぐち・ゆうすけ)

浅草で40年以上続くクリニックを継承し、循環器内科と内視鏡診療を軸に地域医療を支える院長。特に大腸内視鏡検査による大腸がんの早期発見に注力し、「がんで命を落とす人をゼロにする」ことを信念に掲げる。診察から検査、説明まで一貫して自身が担当し、丁寧な説明と痛みの少ない検査で信頼を築くほか、ブログ発信や講演活動を通じ予防医療の普及にも取り組んでいる。

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