トータルサポートクリニック御坂
院長 佐藤友哉(さとう・ともや)

訪問診療は、限られた時間の中で提供されることが多い。
そのため、患者との関係性を強固にしていくためには、多くの時間を要すると一般的には言われている。
だが、トータルサポートクリニック御坂の院長 佐藤友哉(さとう・ともや)医師が向き合う現場は、限られた診療時間が、信頼関係を置き去りにする理由にはならない。
むしろ逆だ。月に二度の訪問でも、「佐藤先生が来るのを楽しみにしていた」と声をかけられる。
そんな距離感を築き上げている。
佐藤医師が担うのは、いわゆる“自宅中心”の在宅ではなく、施設訪問型を主軸とした訪問診療。
サービス付き高齢者住宅などで暮らす人の体調を継続的に見守り、日常的なケアから急変時の対応までを引き受ける。
医療という言葉が持つ心理的な壁を和らげ、”友達”のように話しかけられる存在として患者と接する。
訪問診療の本質を追求し続ける、佐藤医師の白衣の向こう側に迫った。
原点は、祖父の手術室にあった
佐藤医師が医師を志したきっかけは、中学生の頃にさかのぼる。
祖父が脳腫瘍を患い、北海道のT病院で手術を受けた。
見舞いに訪れた際に、手術を経て症状が改善した祖父の姿を目の当たりにした。
印象に残っているのは、祖父の主治医からかけられた一言だった。
「君はまだ中学生だから、これから勉強すればいろんなことができる。今の技術ではこれが限界
かも知れないけど、君が医者になる頃にはもっと良い治療法が見つかるかも知れないから、医学
に貢献してみないか」。
ホルマリンに漬けられた脳腫瘍の断片を前に交わされたその言葉が、心に深く残った。
父は数学の教授。もともとは学問の道に進むことも考えていたという。
「祖父の病気がなければ、医学部には進んでいなかったと思います」。
祖父の手術後に診察室で交わされた医師の言葉が、佐藤医師の原点となった。

専門を横断することで、医師としての幅が広がった
学生時代から内科志望だった佐藤医師は、24歳で成人型喘息を発症した。
「呼吸がうまくできないだけで、生活の質は大きく下がる」。
その実体験から、佐藤医師は呼吸器内科に興味を持ったという。
研修医を修了し後期研修医として勤務した県立の中央病院は、がん治療を中心とする基幹病院であった。
呼吸器疾患の診療に明け暮れている内に、様々な感染症を診ている中で、血液疾患や免疫異常を扱う機会が多く、血液内科の医師と出会い、次第に惹かれていった。
血液内科では、免疫が低下した患者を多く診るため、感染症への対応が必須かつ重要であり迅速な呼吸器管理など、幅広い技術を経験することになった。
「結果的に、呼吸器疾患も診ることができました。専門を変えたというより、広がった感覚でした」。
しかし、医局の人員采配により、血液内科を継続することが困難になってしまう。
4人体制だった現場が3人、2人へと減ることとなり、血液内科としての診療の質を担保できない状態になってしまったのだ。
佐藤医師は、自分が去る際に病院理事長へ血液内科の総合診療科との統合を提案した上で、次のキャリアを模索することとなる。
経験を活かせる現場が訪問診療だった
次の道として選んだのが、訪問診療だった。
産業医の資格を活かしながら産業医として企業に赴く傍ら、アルバイトとして関わり始めた在宅医療の現場で、これまでの経験が想像以上に活きることに気づく。
「血液内科でやってきたことが、そのまま役に立ちました」。
軽症から重症まで、状態の幅が広い患者を診る在宅医療では、科目別に分断されない総合的な視点が求められる。
不足している知識を補いながら、診療の引き出しを増やしていった。
がんによる末期状態の患者に対しての対応は病院で行って来たことそのものである。
トータルサポートクリニック御坂が行うのは、施設訪問型の診療だ。
月二回の訪問で、健康管理を中心に行う。名前を覚えてもらえることも多いという。
「先生が来る日を楽しみにしていた」と言われる距離感が、この医療の醍醐味だと佐藤医師は語る。

信頼関係が患者の人生を変えた
忘れられない症例がある。
ALSを患い、呼吸筋麻痺による2型呼吸不全により二酸化炭素が体内に溜まり、意識障害を起こした患者だった。
このままでは亡くなってしまう。
本人は前医で非侵襲的陽圧換気(NPPV)の導入を強く拒んでいた。
その時の家族からの言葉が忘れられない。
「面会に来て会って口を開けば、先生の話ばかり笑いながらしていたんですよ」
この命の灯を決して消してはならない。
命を守るために必要だと判断し、家族の了承の元、NPPVの導入に踏み切った。
結果、速やかに導入され、無事成功に終わり翌日に意識障害から回復を遂げた。
月に二度しか会わない医師が、患者の中でそれほど大きな存在になっている。
その事実に、佐藤医師は身が引き締まる思いがしたと語る。
「襟を正して診療しなければならないと思いました」。
「友人のような医師」でありたい
佐藤医師が一貫して大切にしているのは、患者との距離感だ。
かつて医師は「お医者様」と呼ばれ、どこか遠い存在だった。
「私は、友人のような医者でいたい」。
フランクに話せる関係性だからこそ、世間話の中に診療のヒントがある。
生活の癖、食事、家族の話、診療時に出てくる冗談、カルテには書かれない情報が、判断の質や精度を高める。
患者をよく知ること。それは特別な技術ではなく、医療の基本だと佐藤医師は考えている。
患者の人生に寄り添う
訪問診療に明確なゴールはない。
佐藤医師が思い描く目標は、「この先生にこそ診てもらいたい」と自然に名前が挙がる存在であること。
そのために、医療の完成度を一段ずつ高めている。
医療の質は、対応時間の長さだけでは決まらない。
どれだけ相手を知ろうとするか。どれだけ責任を引き受ける覚悟があるか。
月に二度の訪問でも、患者の人生に寄り添うことはできる。
佐藤友哉医師の診療は、その事実を証明している。
訪問診療は、患者との関係性が非常に重要な医療だ。
佐藤医師は、今日も患者の”友達”として、信頼の輪を広げている。

トータルサポートクリニック御坂
院長 佐藤友哉(さとう・ともや)
呼吸器内科、血液内科での幅広い臨床経験を経て、訪問診療の道へ。施設訪問型の診療を主軸に、限られた時間の中でも「会えるのが楽しみになる」関係性を築いてきた。医療の壁を取り払い、友人のように話せる距離感を大切にしながら、患者の生活と人生に寄り添う医療を実践している。
