教育が歯科医療の未来を変える

目白ヶ丘デンタルクリニック・矯正歯科 
藤澤 將人(ふじさわ・まさと)

矯正歯科と一般歯科。その両方を一人の歯科医師が兼ね備え、実践している姿は珍しい。
藤澤將人医師は、大学時代に矯正を専攻しながらも「幅広く診る歯科医師でありたい」と考え、一般歯科にも力を注いできた。

開業から13年。SNSや講演、地域での啓発活動を通じて「歯科教育」の在り方を問い続けている。
その根底には「歯科教育は患者の人生を変える」という揺るぎない信念があった。

目次

ワンストップで完結する“設計された治療”

「矯正歯科を専門に学んだ上で一般診療にも取り組む歯科医師は、ほんの一握りだと思います。私はその“マイノリティ”であることに、誇りを持っています」

藤澤医師がそう語るのには理由がある。矯正の世界では歯を“動かす”ことにフォーカスが当たるが、その裏側で重要になるのは、歯周組織や骨の状態だ。歯周病が進行している状態で歯を動かせば、抜けてしまうリスクも高い。だからこそ、歯周病の知識と矯正技術を掛け合わせることが、現場では不可欠になるのだ。

実際に目白ヶ丘デンタルクリニックには、「虫歯の治療と矯正を同時に相談したい」という患者が多く訪れる。なかには、矯正治療を希望しながらも、先に虫歯や歯周病の処置が必要なケースも少なくない。

「虫歯や歯周病の炎症を取り除き、矯正治療で歯並びと噛み合わせを整え、最後に被せ物を入れる。この順番を誤ると、矯正後に上手く噛み合わなくなるんです」

一見すると当然の流れのように思えるが、この“順序”を踏まえて治療を設計できる歯科医師は多くはないという。
矯正歯科と一般歯科の分業が一般的な中で、「自院で一貫して完結できること」は、患者にとって大きな安心感につながっているという。

地域で一番「誠実な歯科医師」でありたい

「“腕のいい歯医者”より、“信頼できる歯医者”でありたいんです。経営のためではなく、患者さんのためにどうあるべきかを突き詰めて考えたいと考えています」

その想いを形にするために、藤澤医師は学びと情報交換の土台づくりにも力を注いでいる。
たとえば、月に一度の院内勉強会。最新の治療技術や症例をスタッフと共有しながら、常に「今より良い医療」を模索している。

また、自身が主催する150名もの歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士が参加する勉強会では、日々の症例や課題をオープンに相談し合い、難症例に対しては最適な専門医へとつなげている。

「自分一人で抱え込まず、最も適した医師にバトンを渡すこと。それもまた患者さんにとって誠実であることの一つだと思っています」

その姿勢は、単に知識や技術を磨くことにとどまらず、地域全体で“チーム医療”を実現する原動力となっている。藤澤医師が目指す「誠実さ」とは、治療の場を超えて、患者・スタッフ・医療者のすべてに貫かれているのである。

目先の治療ではなく、将来を見据えた選択を

今、藤澤医師が最も伝えたいのが「保険診療と自費診療の本質的な違い」だ。
「保険診療は素晴らしい制度です。でもそれが“唯一の選択肢”になることが、長期的な口腔健康にはむしろマイナスになることもある」

銀歯の寿命は、統計的には5年前後。一方、良質な材料で初回に治療した歯は10年、20年と持つ可能性がある。だからこそ、「最初の1回」にこそ、最善を尽くすべきなのだと力を込める。

こうした情報を広めるために、藤澤医師はSNSやホームページの動画配信を通じて積極的に啓発を行っている。また、診療室でも一人ひとりの患者に対して丁寧に説明を行い、選択肢の背景にある意味や将来のリスクまでをしっかり伝えることを欠かさない。

「選ぶのは患者さん自身。でも、正しい情報と理解がなければ、本当に後悔のない選択はできません」
その言葉には、“治すだけの歯科医療”を超え、“患者と未来を共につくる歯科医療”を目指す藤澤医師の強い信念が込められている。

“教育”で歯科医療の底上げを

「口は健康の入口です。だから私は、全身の健康を守る第一歩を担っているという自覚があります」

その想いは、全年齢に向けた口腔教育へと広がっている。たとえば、0歳から始められるトレーニングでは、授乳や抱っこの仕方に始まり、呼吸・発話・咀嚼のトレーニングを通じて、健やかな発育の土台を整える。成長期の子どもには正しい噛み合わせや口腔習慣を身につけてもらい、将来的な歯並びや姿勢にも良い影響を及ぼす。

さらに、50歳以降に急増する口腔機能低下症に対しては、早期発見と予防トレーニングを組み合わせることで、「食べる力」「話す力」を失わないサポートを行っている。

また、妊娠中の母親に対しても「お母さんの口腔環境が赤ちゃんの健康に直結する」という意識を広めるため、歯周病予防や生活習慣の啓発を欠かさない。世代ごとにアプローチを変えながら、生涯にわたって健康を守る歯科の在り方を提示している。

“教育”を軸に、日本の歯科医療を底上げしていく。そのためには、歯科医師側からの情報発信だけでなく、患者自身が“正しい知識を持った歯科医師を選び取る力”を育むことも欠かせない。藤澤医師の活動は、その“選ぶ力”を地域に根付かせるための挑戦でもある。

“治す”から“育てる”医療へ

藤澤医師の挑戦は、“治す”フェーズから“育てる”フェーズへと移行している。

歯の健康を守るためには、患者と歯科医の双方が努力する必要があると藤澤医師は語る。歯科医だけが熱意を持っていても、患者のモチベーションや歯科医療への理解度が上がらなければ、医療は上手くいかない。

藤澤医師は、目の前の患者と向き合いながらも、正しい情報を発信し続けることで、地域の歯科医療への理解度を高めようと尽力している。
その歩みは、地域の健康を着実に守りながら、歯科医療の未来をつくる礎となっている。

目白ヶ丘デンタルクリニック・矯正歯科 
藤澤 將人(ふじさわ・まさと)

大学時代に矯正歯科を専攻しつつ、幅広く診られる歯科医師を目指して一般歯科も深く学ぶ。
「矯正×一般歯科」を一院で完結できる稀有なスタイルで、虫歯・歯周病治療から矯正、補綴まで一貫した“設計された治療”を提供している。地域での勉強会やSNSを通じた啓発にも力を注ぎ、「誠実な歯科医療」と「歯科教育」を広めることで、患者の未来の健康を支えることを使命としている。

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