自分の身体は、自分で守る。「自己責任の歯科医療」を貫く、ハートデンタルクリニック・葉清貴歯科医師の信念

「先生におまかせします」──。

患者がよく口にするこの一言に、「一番嫌いな言葉です」と語る歯科医師がいる。
医療法人社団ハートデンタルクリニック理事長・葉清貴(よう・きよたか)歯科医師。

小学生の頃から「人助けをしたい」という想いを抱き、歯科医師の道を選んだ。予防歯科に強い信念を持ち、自らも56歳にして一度も虫歯になったことがないという実体験をもとに、30年以上にわたり診療を続けてきた。

葉理事長が診療の軸に据えるのが、「自己責任」という考え方。
それは冷たい突き放しではなく、むしろ「自分の身体を自分で守る」という、根源的な尊厳への問いかけである。

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「おまかせします」は信頼ではなく“責任放棄”

葉理事長は「治療はゴールから始めるべき」と語る。
抜歯をするかしないか。その意思によって、提案される治療方針は変わる。

「迷いがあるなら、今日は治療しません。患者さまの意志が固まるまで」
この明確な姿勢は時に「厳しい」と受け取られるが、「覚悟を持って来てくれる患者とは、圧倒的に良い関係を築ける」と語る。

「治療前には必ず患者と対話し、選択肢を示した上で、治療方針を選んでもらっています」と話す葉理事長。
その際に違和感を覚えるのは、「先生におまかせします」という言葉だという。

「自分の身体のことなのに、判断を人に委ねるのは違います。ネットで調べることもできるし、不安なら質問すればいい。それで納得できなければ、治療を受けなければいい。それが“自分で決める”ということです」

歯科医師は選択肢を提示し、患者が選ぶ。
この対等な関係を大切にすることが、信頼ある診療に不可欠だと葉理事長は考えている。

歯の治療から始める、人生の主体性

「人生もすべて自己責任です。自分で決めることで、人のせいにしなくなります」
葉理事長の語る「自己責任」とは、責任の押しつけではなく、選び取る力を育てるための哲学だ。

「“先生を信頼しているから”という言葉は、実は責任を手放している。自分の身体に関する選択は、自分のものとして引き受けてほしいんです」

歯科という身近な医療だからこそ、そこで培われる「選択の経験」が、その人の生き方そのものにも影響すると信じている。

経営にも”哲学”を。スタッフの生活も守る診療体制

葉理事長は、診療時間をあえて最終受付16:30と短くしている。
「会社帰りには来づらいですよね。でも、歯のために時間をつくる覚悟がある方だけを診たいんです」

それはスタッフの暮らしを守るためでもある。
「お母さんの手作りご飯を家族が囲んで、団欒する時間を。そのためには、5時には診療を終え、5時半には全員が帰れる診療体制が必要です」

多くの患者を診るよりも、思いを共有できる患者と丁寧に向き合うことを選んだスタイルは、歯科医院の新しい経営像とも言える。

自分の”哲学”に責任を持つ

分院を出せば売上は上がるかもしれない。でも、そこに自分の想いがなければ意味がない。
葉理事長は分院展開を考えていないという。理由は明白だ。

「自分の名前が掲げられている以上、そこで行われる診療にも自分の哲学が通っていなければならない。もし考え方の違う院長がいたら、“本院と違う”と評判を落とすことにもなる。それだけは絶対に避けたい」

売上至上ではなく、理念と利益のバランスで経営をすること。
これもまた、「誰のために診療するのか」という問いに真摯であるための選択だ。

葉理事長は、ホームページなどでの情報発信にも力を入れている。来院前にできる限りの情報を届けるのは、患者が事前に自分で選択する環境を整えるためだ。

「自分で決めた治療方針を理解する」へ。
そうした文化を、歯科医療の現場から広げていく。

歯科医療から、社会全体を“ととのえる”ために

「私は歯科医師として、予防・矯正・審美の分野を通じて、“健康を育てる”ことに貢献したいと思っています」
自分の治療方針と異なる治療はしない。
自分の価値観に共鳴してくれる患者と誠実に向き合う。
それができるのは、「何のために歯科医療を行うのか」という信念があるからだ。

治療を押し付けるのではなく、“患者が納得できる選択”を一緒に導くこと。
歯科医院という場所が、そんな場であり続けるように──

葉理事長は、今日も診療台の前で、患者と対話を重ねている。

葉清貴(よう・きよたか)

ハートデンタルクリニック/理事長 葉清貴
鹿児島県出身。鹿児島大学を卒業後、宮崎県都城市の隣町の三股町の歯科医院に11年間勤め、退職して5日後の2007年4月に都城市内にハートデンタルクリニックを開院。患者さまが一生健康で豊かな生活を笑顔で送れるクリニックを志し、患者さまと歯科医師の価値観の共有も重視しながら治療を行う。

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